米国株の日足でRSIトレンド別に過去検証|相場環境で結果は変わるか
米国株100銘柄の日足(銘柄により5〜56年分)で、RSI30割れ買いを上昇・下降・レンジの3環境に分けてENTRIQで過去検証しました。プラス決済割合・平均損益・最大逆行の観点から整理します。
この記事について
ENTRIQで100銘柄(期間は銘柄により5〜56年)を過去検証した結果です(Dataset v2.0)。手仕舞い3パターン全体の比較はRSI30割れで買った場合の過去検証|手仕舞い3パターンとリスクを整理にまとめています。本記事ではそこから一歩踏み込み、「相場環境(トレンド)によって結果がどう変わるか」に絞って整理します。
相場環境をどう定義するか
RSIは相場の過熱感を測るオシレーターですが、同じ「RSI30割れ」でも、株価がどんな文脈にあるかで、その後の値動きの傾向は変わります。本記事では相場環境を以下のように定義しています。
- 上昇トレンド:エントリー日の終値がSMA200より上、かつSMA200が20営業日前より上
- 下降トレンド:終値がSMA200より下、かつSMA200が20営業日前より下
- レンジ:上昇トレンドにも下降トレンドにも当てはまらない局面
「価格位置」と「SMA200の向き」という2つの条件を組み合わせることで、短期的な位置だけでなく大きな流れも反映できます。SMA200の傾きを20営業日で測るのは、ノイズを減らしつつ方向転換をある程度早めに捉えるためです。
検証条件(前提)
- 対象銘柄群:S&P500の現在の構成銘柄から時価総額上位を1セクター15銘柄までで選んだ米国株(100銘柄)
- 期間:各銘柄で取得できる全期間。最低5年分ある銘柄のみ(最短5年・最長56年)
- 時間軸:日足(株式分割調整済み)
- RSI設定:期間14、Wilder方式
- エントリー定義:RSI(14)が30を下抜けた日の翌営業日の始値で買い
- 同一銘柄の保有中に次の条件が出た場合は見送る(同時に1つだけ保有)
手仕舞いパターン(3通り):
- A_rsi50:RSIが50以上に戻った翌営業日の始値で手仕舞い(戻らない場合は60営業日目の終値で手仕舞い)。損切りは置かない
- B_10bars:エントリーから10営業日目の終値で手仕舞い。損切りは置かない
- C_stop5:−5%で損切り。損切りにかからなければ10営業日目の終値で手仕舞い。寄り付きで窓を開けて下げた場合はその始値で約定するため、1トレードの損失が−5%を超えることがある
生存者バイアスについて: 対象はS&P500の現在の構成銘柄です。過去に上場廃止や指数から除外された銘柄は含まれていません。「存続できた」銘柄のみを見ていることになるため、実際の投資環境より良い方向に結果が偏る可能性があります。
トレンド別の検証結果
パターンA(RSI50回復まで)
| 環境 | N | プラス決済割合 | 平均損益 | 平均損失 | MAE中央値 | プロフィットファクター | 最大連敗(銘柄内) | 平均保有 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 上昇トレンド | 1,088 | 75.6% | +2.47% | -7.56% | -3.66% | 2.36 | 4 | 17.5営業日 |
| レンジ | 2,171 | 72.0% | +2.08% | -7.98% | -4.61% | 1.94 | 7 | 19.7営業日 |
| 下降トレンド | 1,906 | 70.5% | +2.04% | -10.32% | -5.42% | 1.69 | 6 | 19.7営業日 |
※過去のサンプル(全体N=5,318)・将来の成果を示すものではありません
パターンAでは、プラス決済割合・平均損益・プロフィットファクターのいずれも、上昇トレンド→レンジ→下降トレンドの順に高くなっています。MAE中央値(エントリー後に一時的にどこまで含み損が広がったか)と平均損失は下降トレンドが最も大きく(よりマイナス)、上昇トレンドが最も小さくなっています。
下降トレンド中は、損切りを置かずに保有を続けたまま大きく下げる局面も含まれており、最大損失も下降トレンドが上昇トレンドより大きく(よりマイナス)なっています。1銘柄の中での最大連敗も、下降トレンドが上昇トレンドより多く観察されました。
パターンB(10営業日後に決済)
| 環境 | N | プラス決済割合 | 平均損益 | 平均損失 | MAE中央値 | プロフィットファクター | 最大連敗(銘柄内) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 上昇トレンド | 1,121 | 59.3% | +1.18% | -5.11% | -2.88% | 1.58 | 7 |
| レンジ | 2,700 | 59.2% | +1.20% | -5.24% | -3.37% | 1.57 | 8 |
| 下降トレンド | 3,014 | 53.8% | +1.17% | -5.91% | -4.12% | 1.44 | 12 |
※過去のサンプル(全体N=7,029)・将来の成果を示すものではありません
パターンBでも、プラス決済割合・プロフィットファクターは上昇トレンドが最も高く、下降トレンドが最も低い傾向が観察されています。MAE中央値と平均損失は下降トレンドで最も大きく(よりマイナス)、上昇トレンドで最も小さくなっています。最大損失も下降トレンドが最も大きく(よりマイナス)、1銘柄の中での最大連敗も下降トレンドが最多です。
平均損益については、レンジが上昇トレンドをわずかに上回っています。10営業日という固定の保有期間のため、下降トレンドでは回復しきれないまま決済になるケースと、早期に手仕舞いが区切られるケースとが混在していることが数字に反映されていると考えられます。
パターンC(−5%損切り+10営業日決済)
| 環境 | N | プラス決済割合 | 平均損益 | 平均損失 | MAE中央値 | プロフィットファクター | 最大連敗(銘柄内) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 上昇トレンド | 1,161 | 52.2% | +0.89% | -4.10% | -2.95% | 1.46 | 7 |
| レンジ | 3,027 | 48.1% | +0.51% | -4.36% | -3.54% | 1.23 | 13 |
| 下降トレンド | 3,464 | 42.0% | +0.46% | -4.49% | -4.27% | 1.18 | 15 |
※過去のサンプル(全体N=7,865)・将来の成果を示すものではありません
パターンCでも、プラス決済割合・平均損益・プロフィットファクターは上昇トレンドが最も高く、下降トレンドが最も低い傾向が見られます。平均損失とMAE中央値は下降トレンドが最も大きく(よりマイナス)なっています。1銘柄の中での最大連敗も下降トレンドが最多です。
なお最大損失のトレンド別の順序は、パターンCでは上昇トレンドが最も大きく(よりマイナス)、次いでレンジ、下降トレンドとなっており、他のパターンとは異なる並びになっています。−5%損切りを置くことで下降トレンドの大きな損失が抑えられた一方、上昇トレンドでも寄り付きの窓開けで損切り水準を超えるケースがあったことが一因と考えられます。
3パターンを横並びで読む
3パターンいずれについても、トレンド別の傾向は同じ方向を向いています。すなわち、上昇トレンド中のRSI30割れが、過去検証ではプラス決済割合・プロフィットファクターがトレンド別で最も高く、下降トレンドが最も低いという観察結果です。
一方で、下降トレンドのサンプル数が最も多い点も見逃せません(3パターンとも下降トレンドのNが上昇トレンドより多い)。下降トレンド中にこそRSI30割れが多く発生するという構造的な傾向がここに表れています。つまり「条件が出やすい環境」と「結果が良い環境」がずれています。
MAE中央値はすべての環境・パターンでマイナスになっています。エントリー後に一時的な含み損が発生すること自体は避けられないため、この数字を自分のリスク許容度と照らし合わせて考えることが重要です。
自分のチャートで環境を判定する手順
以下の手順で相場環境を判定してから記録に残す流れをENTRIQのチャートリプレイで確認できます。
- SMA200を表示する:チャートに200日単純移動平均線を追加します
- 価格の位置を確認する:終値がSMA200より上か下かを見ます
- SMA200の傾きを確認する:現在のSMA200が20営業日前より上か下かを見ます(チャート上で右肩上がりか右肩下がりかを目視でも確認できます)
- 環境を分類する:①終値がSMA200より上かつSMA200が上向き→上昇トレンド、②終値がSMA200より下かつSMA200が下向き→下降トレンド、③それ以外→レンジ
- RSI(14)が30を割れているか確認する:条件が出ていれば、その環境をトレード記録に残します
- 戦略タグで環境を分けて記録する:例えば「RSI30_上昇」「RSI30_下降」「RSI30_レンジ」のようにタグを分けると、あとで自分の記録をトレンド別に集計できます
この検証の限界と注意
- 生存者バイアス:前述のとおり、対象は現在のS&P500構成銘柄のみです。過去に上場廃止・除外された銘柄は含まれていません
- SMA200の定義依存:トレンドの定義を変えれば(例:SMA50を使う、傾きの計算期間を変えるなど)結果も変わります。本記事の定義はあくまで一例です
- 環境の境界付近:SMA200を価格がまたいでいる局面や、SMA200がほぼ横ばいの局面では、上昇・下降・レンジの分類が短期間で切り替わることがあります
- 銘柄・時代による差:本検証は5〜56年の長期データを含んでいます。特定の相場局面が結果に影響している可能性があります
- 決算データは2008年以降のみ:本記事のトレンド別分析は決算期間との重複を考慮していません。決算前後の影響については決算またぎの過去検証|決算マーカーで値動きを振り返る方法を参照してください
まとめ
今回の過去検証(ENTRIQで100銘柄、Dataset v2.0)では、RSI30割れ買いのトレンド別の傾向として以下が観察されました。
- 上昇トレンド中:3パターン(A/B/C)いずれも、プラス決済割合・プロフィットファクターがトレンド別で最も高く、MAE中央値・平均損失が最も小さい(よりゼロに近い)
- 下降トレンド中:同じく3パターンいずれも、プラス決済割合・プロフィットファクターが最も低く、平均損失・MAE中央値が最も大きい(よりマイナス)。ただしサンプル数は最も多く、この環境でこそRSI30割れが多く発生している
- レンジ:プラス決済割合・プロフィットファクターは上昇トレンドと下降トレンドの中間に位置する傾向がある
この観察結果をそのまま将来に当てはめることはできませんが、「どの環境でエントリー条件が出ているか」を記録しておくことは、自分のトレードを振り返るうえで有効な視点の一つです。ENTRIQのチャートリプレイでSMA200を表示しながら練習し、環境別の傾向を自分の手で確かめてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. SMA200以外のトレンド判定方法でも同じ傾向が出ますか?
A. 本記事はSMA200と20営業日の傾きで定義した場合の観察結果です。SMA50やSMA100など、別の移動平均線を使った場合や傾きの計算期間を変えた場合は、分類される局面が変わるため結果も変わります。
Q. 下降トレンド中はRSI30割れを使わないほうがよいですか?
A. 過去検証では下降トレンド中の結果が上昇トレンドより低い傾向が観察されました。ただし、これは過去の観察結果であり、将来に同じ傾向が続くかどうかはわかりません。また下降トレンド中にもプラス決済になったトレードは多数あります。どう解釈するかは自分のルールと照らし合わせて判断してください。
Q. 上昇トレンドの判定はいつ時点でするのですか?
A. 本検証では「RSI30を下抜けた日」の終値とSMA200の関係で判定しています。翌営業日にエントリーした時点ではなく、条件が確定した日の終値時点の環境です。
Q. 手仕舞い3パターンの全体比較はどこで見られますか?
A. RSI30割れで買った場合の過去検証|手仕舞い3パターンとリスクを整理で詳しく解説しています。
Q. 自分のトレードで環境をタグ管理するにはどうすればよいですか?
A. ENTRIQの戦略タグ機能を使うと、「RSI30_上昇」「RSI30_下降」のように環境を分けてトレードを記録できます。詳しくはトレード記録のつけ方|戦略タグで振り返りを続けるをご参照ください。
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本記事は過去データの検証・整理を目的とした情報提供であり、特定の売買を推奨するものではありません。掲載の数値は過去のサンプルであり、将来の成果を示すものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
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